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有価証券オプション(かぶオプ)について

2011年05月25日

 個人投資家によるデリバティブ取引はFX取引や日本株株価指数の先物・オプション取引などで増加しているが、個別株やETFなどのオプション取引は日本ではこれから拡大していくことが期待されている。その期待もあって今年1月に東証は、有価証券オプション取引に“かぶオプ”と言う名称を付け、個人投資家への個別株・ETFのオプション取引の浸透を図ろうとしている。東証及び大証ともにこれらのオプション取引増加をもくろむ背景には、世界的な個別株オプション取引の拡大がある。東証によると、昨年の全世界での取引は1日あたり約2,000万枚。取引の中心は欧米だがアジア地域の取引所での取引も急増しており、香港取引所での個別株オプション取引(ワラントという名称を使う場合もある)は1日あたり25万枚となっている。日本でも一昨年から増え始めてはいるが、1日あたりの取引高は東証・大証合わせて5,000枚程度である。世界的な投資トレンドから見て、日本の個別株オプションはまだ伸張する余地が大きい。ただしオプション取引独特の問題もあって、個人投資家に広まっていくためにはいくつかのハードルもあるようだ。それらの現状と問題点について、東証の個別株オプション取引=“かぶオプ”中心に見てみると次の様になっている。

【基本的な取引の仕組み】

 対象とする銘柄は3月末で154銘柄あり、これに対してプット(売る権利)とコール(買う権利)・最低5つの権利行使価格・決められた6つの現月(取引期間)毎に値段が付く。つまり1対象銘柄について少なくとも60(2×6×5)以上個別に取引価格が付くことになる。実際の“かぶオプ”の取引価格は約1万種あり、1対象銘柄で平均すると65の取引価格があることになる。これは対象銘柄の株価が大きく変動すれば権利行使価格も増えるためである。

【取引を補完する仕組み】

 東証では2009年10月からマーケットメイカー制度を導入しているが、“かぶオプ”の流動性の向上には役立っているようで出来高増加に繋がっている。ただし現在のマーケットメイカーはメリルリンチ証券が18対象銘柄、インタラクティブ・ブローカーズ証券が6対象銘柄、ソシエテジェネラル証券が1対象銘柄で、日本の証券会社でのマーケットメイカーはいない。

【個人投資家が売買するためのポイント】

 実際に“かぶオプ”を取引するためには、そのオプション価格が割安か割高かという判断が出来なければならない。そのため自分で計算を行う機関投資家とは異なり、個人投資家に対してはリアルタイムのボラティリティ(変動率)や時間的価値を判断するための指数などが提供されなければならない。ただしこの様な情報を個人投資家に証券会社が提供することは、日本株指数オプションでは既に行われている。

【個人投資家の取引の現状】

 今までは東海東京証券など一部の証券会社が顧客から対面で受けた注文を取引所に繋いでいたが、オプション取引は膨大な情報を整理して効率良く伝える必要があり、値動きの激しい対象銘柄はリアルタイムで投資判断を行う必要もあるため、個人の個別株オプション取引もネット取引が適していると見られている。今年3月にインタラクティブ・ブローカーズ証券、4月末からカブドットコム証券が個人向け“かぶオプ”取引を開始したが、今後SBI証券や岡三オンライン証券も参加することが予定されている。

【個人投資家取引拡大のための問題】

 既に始まったカブドットコム証券の“かぶオプ”取引は、かなり制限されたものになっている。対象銘柄数をTOPIXCore30銘柄に絞り、オプションの買建てのみで売建てすることは出来ない。(株価指数オプションとは異なる)また取引限月も直近の4つに限っている。特にオプション取引の重要な投資戦略である売建てが出来ないことは、個人の“かぶオプ”取引にとって障害となる可能性もある。ただし証券会社側から見ると、先の大震災後の株価変動で指数オプション取引に係り大きな立替金損失を出した直後であるし、個別株オプションの流動性向上がまだ見えない現状ではやむを得ない措置かもしれない。

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