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私設取引システム(PTS)の現状

2015年04月24日

 昨年前半まで増加傾向だった私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)の上場銘柄取引シェアが低下している。2013年は一時6%を超えていたが、本年2月は4.37%となっている。これは、東京証券取引所によるTOPIX100採用銘柄の二度にわたる呼値細分化(昨年1、7月)が影響していると見られるが、欧米市場でのPTSシェア3割程度に比べ著しく低いPTSの利用は、今後再び拡大していくのだろうか。

 PTSは取引所の代替市場とも言われ、取引所取引に比べ次のような優位性がある。
●取扱銘柄の呼値が細分化(概ね10分の1)されているためHFT(高頻度取引)や短期的なトレーディングに向いている
●取引所よりも取引時間が長く、夜間取引にも対応している
●取引参加者(証券会社)にとって、取引所よりも取引コストが低い

 しかし、信用取引に対応していないなど個人トレーダー層から見た課題もあるのが現状だ。このPTSのわが国における成り立ちを見てみると、以下のような沿革になっている。

1998年12月 証券取引法の改正で「取引所集中義務」を撤廃
2010年 3月 ダークプール(証券会社内取引やそれを付け合せるクロッシングサービス)の取引を規制でToS
        TNeT(取引所取引)かPTSへ
2010年 7月 日本証券クリアリング機構(JSCC)での清算・決済を開始
2010年10月 空売り注文の取り扱いを開始
2011年    大和証券、GMOクリック証券、マネックス証券、カブドットコム証券各社がサービスを終了
2012年 4月 日本証券業協会のガイドラインが変更され、取引所のシステム障害時には運営を継続可能に
2012年10月 5%ルール(公開買付規制)の適用除外へ

 金融ビックバン以降、代替市場として制度整備されてきており、特に5%ルール適用除外により機関投資家や証券会社の自己売買部門で利用しやすくなっている。また、一時7社あった上場株式のPTSは現在SBIジャパンネクスト証券とチャイエックス・ジャパンの2社に集約されている。

 SBIジャパンネクスト証券は、2007年8月にSBIクループとゴールドマン・サックスの合弁で取引がスタートし、SBI証券を始め楽天証券やGMOクリック証券などネット証券顧客の夜間取引の受け皿となっていたが、東日本大震災による一時的夜間取引停止(2012年1月末再開)以降、SBI証券以外のネット証券会社の参加はない。同社の取引参加者数は22社とされている。

 一方、チャイエックス・ジャパンは、野村ホールディングスが2007年2月に米PTS大手のインスティネットを買収し、その子会社のチャイエックスが2010年7月から日本でPTS業務を開始。最近半年間で、中堅証券会社の自己投資の利用目的で新たに7社参加し、現在の取引参加者数は26社。

 代替市場としてのPTSは、取引を増加させるために様々な工夫がされているが、呼値の細分化などのように取引所の取引機能の改善を促すこともある。また取引所では一旦見送られた夜間取引などにも対応しているので、既に取引所の一定の代替機能を果たしている。利用する投資家以外の一部から批判もあるHFT等に対しても、超高速取引ニーズに機能面では応えながらも、一方ではHFTを利用しない機関投資家に対して、発注方法を工夫することで「発注数量全体を他の取引参加者から秘匿したい」や「値幅のブレを小さくしたい」といったニーズにも応えている。

 現状のPTSは若干取引シェアを落としているものの、再度の取引拡大のためには、率先して投資家ニーズに沿った革新的な取引機能の提供が必要であると考える。そのことが、日本市場全体の質向上にも繋がっていくだろう。

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