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市場の番人としての監査法人

2015年06月25日

 新規株式公開(IPO)においては、最近上場直後の大幅な業績下方修正が問題になっており、IPO主幹事証券会社の引受審査の一層の品質向上が求められている。一方、東芝などの不正会計問題(電力やインフラ部門における工事進行基準の計上の方法等)では、財務諸表監査を行う監査法人の在り方も改めて注目されている。古くは、米SOX法(上場企業会計改革および投資家保護法、通称サーベンス・オクスリー法)導入の契機となったエンロンやワールドコムの不正会計問題において、会計監査が正常に機能しなかったことも思い起こされるが、監査法人が市場のゲートキーパーとして機能するよう、行政の対応も一層厳格化している。

 問題のある監査法人に対して、昨年から4件の行政処分(業務改善命令や一時的業務停止命令)が実施され、以下の問題点が、行政処分勧告を行う公認会計士・監査委員会より指摘されている。(処分内容の共通事項)

●監査業務についての品質管理システムの不備(監査法人内や公認会計士間の相互牽制など)
●特別な検証を必要とするリスクに対して監査手続きを十分に実施していないこと
●監査業務に係る法人内の審査に関して、批判的な観点の欠如など十分な審査が行われていないことや審査のための人員が不足していること
●公認会計士・監査審査会(金融庁)や日本公認会計士協会(以下、協会)からの重大な指摘事項に対して、改善活動に取り組んでいないこと 等

 以上のように、一般的感覚で言えば非常に厳しい対応が行政から求められている。監査業務を行う監査法人の報酬が、その対象の企業より支払われるものの、監査された企業の財務諸表は多くの投資家の投資行動に大きな影響を与える。そのために、協会の自主規制や行政の指導によって、監査規律や監査の専門性を維持することが必要となるので、次の2つが制度化されている。

●協会による監査法人に対する品質管理レビュー
●公認会計士・監査審査会による監査法人に対するモニタリング

 また協会は、社会的に影響の大きい上場企業を監査する監査法人の品質管理態勢を強化し、資本市場における財務諸表監査の信頼性を確保するために、2007年4月から「上場会社監査事務所登録制度」を導入。同制度による登録を行った監査法人は、投資家を初め市場関係者に品質管理の状況を明らかにする目的で、次の情報開示が求められている。

 ・登録された監査事務所の概要
 ・その監査の品質管理システムの概要
 ・品質管理レビューの実施状況

 現在「上場会社監査事務所登録制度」に登録されている監査法人は148法人。なお、監査法人とは、財務書類の監査又は証明を組織的に行うことを目的として、5名以上の公認会計士が共同して設立した法人をいう(法34条の2の2第1項)。その構成は、法人に出資し社員として重要事項の決定に参加する資格を持つ公認会計士の他、従業員としての公認会計士もいるが、公認会計士ではない社員の割合は25%未満でなければならない。現在、220法人、約2.7万人が公認会計士業務を行っている。

 監査法人は、市場のゲートキーパーの中では、最も専門性の高い業務を行っており、投資家を始めとする市場の参加者は、彼らが監査した財務諸表を基に投資判断を下しているので、厳しい職業倫理規定とともに専門性を維持する努力も制度的に求められている。改めて見直した時、投資家にとっても監査法人は重要な市場の番人であることに気付くのではないだろうか。

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