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始まった株主コミュニティ制度

2015年11月25日

 証券会社が取り扱う未公開株制度は、グリーンシート制度があるが、取り扱う証券会社が減少し、銘柄に対する市場のインフラ機能も十分でなかったことから実質的に開店休業状況となっており、平成30年3月末をもって同制度は終了する。

 一方、新しい制度として株主コミュニティ制度が今年6月より始まり、8月下旬には今村証券がYKKを始めとする地元(北陸地方)有力企業11社の株主コミュニティを組成した。また、10月下旬には島大証券(富山)が5社(今村証券銘柄と重複)で同制度を始めている。実際の売買が行われたのは、現時点(11月上旬)で立山黒部貫光と北陸鉄道の2銘柄のみである。この制度についての現状を簡単にまとめたい。

【利用する未公開企業側のメリット】
○既存株主の売却ニーズ(相続等)を証券会社に任せて処理することが出来る
○地域に根差した企業の株主優待制度など、地元利用者にアピールすることが出来る
○金融商品取引法開示に対応しなくてもよく、情報開示に伴うコスト負担が少なくて済む

【株主コミュニティを組成する証券会社のメリット】
○地元大手未公開企業をサポートすることで、株主対策だけではなく資本政策等に関与する可能性が高まる
○地元大手未公開企業の投資に関する職域ビジネス(職場NISA、確定拠出年金制度等)に関与することが出来る
○地域密着を顧客と地元企業の双方にアピールすることが出来る

 以上のメリットを得るためには、証券会社で企業毎の株主コミュニティを組成していく必要があるが、その流れは次のようになっている。

・証券会社と地元企業が、株主コミュニティの組成で合意
・証券会社が、主に企業内容等の審査を行う(ファイナンスを実施する場合は資金使途等の審査も行う)
・企業自らが、取引先企業や利用者などへ株主コミュニティへの参加勧誘(証券会社は投資家に対して株主コミュニティへの参加勧誘を行わない)
・証券会社は、株主コミュニティへの参加者に対して投資勧誘を行うことが出来る(対象企業の情報を株主コミュニティ参加者に提供することが出来る)
・株主コミュニティ参加者以外への情報提供は、銘柄名と企業のウェブページのURL・株主優待制度・募集や売出しの情報に限られている。

 以上の仕組みは、証券会社の店頭取引を前提とした未公開株取引制度だが、同制度の定着のためには、以下のことが重要になると予想される。

◇同制度を取り扱う証券会社にとって、社内の体制整備等に掛かるコストを、参加する企業側にフィーとして転嫁出来るかどうかが制度拡大のポイント。そのためには、株主コミュニティ組成のフィーをある程度の水準とするか、ファイナンスや大株主の売出しを収益化することが考えられる。

 この制度の原型は、日本証券業協会で店頭登録制度(現ジャスダック)が本格的に稼働する以前に、証券会社が地元未公開有力企業の株式を店頭で売買していたものに近い。その後、未公開株式取り扱いの自主規制ルールが厳格になったり、株式がペーパレス化し、また情報化社会が進んでいる。そのため、この制度を定着させるには、対象株式を証券保管振替機構の対象とし決済や保管の利便性を図ることや、対象企業情報提供のインフラを業界でサポートするなど、インフラ面で証券業界全体の支援が必要なのではないだろうか。

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