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証券取引等監視委員会の役割と最近の動向について

2016年11月25日

 証券取引等監視委員会(以下、監視委)は、10月25日に「平成28事務年度証券モニタリング基本方針」を公表した。まず証券モニタリングの取り組み方針として、全ての金融商品取引業者等に対し、オンサイト・オフサイトの一体的なモニタリングを実施するとしている。今までは、大手証券会社グループに対して監視委と金融庁が一体となって検査・監督に当たっており、今後はその他の金融証券取引業者等に対しても各地域の財務局と協働してモニタリングを実施する。業種別の主な検証事項は次のとおり。

【大手証券会社】 海外拠点での業務を含むリスク管理態勢を重点的に検証。
【上記以外の証券会社】 業務運営の適切性について検証。地域証券会社については、取り扱う商品のリスクの所在を十分検討しているか等について検証。
【FX業者】 外為市場で大きなイベントが発生した場合、投資者保護上の措置及び業者自身のリスク管理態勢の整備状況について検証。
【投資運用業者】 業者自身のガバナンスの構築状況、運用するファンドのガバナンスの構築状況等について実態把握を行い、今後の効果的なモニタリングを行うためのベンチマークの策定へ。
【投資助言・代理業者】 顧客に誤解を生じさせる広告や虚偽の説明による勧誘の有無等について検証。

 その他、業界横断的に顧客本位の業務運営、サイバーセキュリティ対策、高速取引注文の増加を踏まえた売買審査の実施状況等について実態把握していくとしている。

 最近の動向では、金融商品取引業者以外への動きも目立っている。東芝の会計不祥事では、刑事訴追を前提に歴代の社長3人から任意で事情聴取していることが報じられており、上場企業の不正会計についても有価証券報告書の虚偽記載として、複数の課徴金納付命令勧告を金融庁に対して行っている。また、インサイダー取引や相場操縦行為など市場での不公正取引への摘発も、以前に比べて迅速化している。

 監視委は、法的には金融庁に属する審議会等の一つで、金融庁設置法では金融審議会と同じ位置づけとなり、米国のSEC(証券取引委員会)に比べ規則制定権がないものの、金融商品取引法第211条において強制調査権が与えられている。証券取引や金融先物取引等の公正を確保する目的で、1992年に大蔵省に設置され、その後の省庁再編で内閣府外局たる金融庁の審議会等となっている。現在の委員構成は、検察出身の佐渡委員長、弁護士事務所顧問だった吉田委員、監査法人のパートナーだった園委員となっており、財務局の関係人員も含めて764名(平成27年度、監視委は410名)の人員となっている。この陣容は、設立当時200名程度だったものから約4倍近くに拡充している。監視委の各機能とその最近の業務実態(平成27年度)は次のようになっている。

◇市場分析審査 : 一般から年間7,758件の情報提供があり、不公正取引の審査は年間1,097件。
◇証券検査 : 対象となる金融商品取引業者等は約8千社。検査実施は254業者で、その内第1種金融商品取引業者は61社で検査結果に対する勧告は18社。
◇取引調査 : インサイダー取引や相場操縦等の不公正取引を行った者に対し、課徴金の支払いを求める勧告を行うための調査。勧告件数は35件。
◇開示検査 : 上場企業約3,600社等が提出開示書類に虚偽がないか検査。勧告件数は6件。
◇犯則調査 : 違反行為のうち、重大・悪質なものを調査し、検察官に告発。告発実施数は8件。

 このように監視委の業務は、調査・検査を通じて金融商品取引の公正さや健全性を維持して投資家を保護していくものだが、一方では市場と投資家を仲介する金融商品取引業者の健全な育成も、金融における重要な成長戦略ではないだろうか。

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